米日3DCGを使用した映画の草分け

私が3DCGを始めたのは1982頃、その当時中学生だった私が大きく影響を受けたのが米映画TRON。

フルCGではなく実写と合成したタイプの様式で、現代の映像制作のフォーマットの原点ともいえる手法をとる。

当時は3DCG自体が全くと言っていいほど世間では認知されておらず、CGといえばゲームのドット絵か “レーダーとかの線で描かれた単色な計器類の画面みたいの?” 程度の認識だった。このことからTRONは一般の人に「コンピューターって演算で映像作れるんだ」と知らしめた偉大な作品といえると思う。ただ3DCG自体は劇中96分前後のうち20%程度で、使用割合はあまり多くないく、ほとんどが実写の人物&セット映像に手作業によるアナログ光学合成で加工をしたものだった。

日本では翌1983年にアニメ映画ゴルゴ13劇場版で一部に3DCGを使用した。

日本はやっぱアニメから。。。ほんと日本らしい。

当時中学生だった私は、少々アダルトな表現もあるこの作品を観るのには人目をはばかるものがあったが、R指定・PG指定等の制限も無かった頃(?・・・と思う)なので世間的には問題はなかった。

使用されたのはオープニングと一部のカットのみで、必要に迫られて3DCGを使ったのではなく、ただ “3DCGでやってみたかった” 感の漂う感じのものであった。くわえてオープニングは実写のストップモーション・アニメとの混成で画質と動きがギクシャクしていた。私はかなり完成度にがっかりして劇場を後にした記憶が今でも鮮明に残っている。

劇中のヘリのシーンも当時人気のあったレーザーディスク採用のアーケードゲームThunderStorm(映像はセルアニメ)の影響が漂っており、完全にアニメに負けてしまった感じ・・・

「・・・セル画の方がよかったのでは・・・」

今考えるとアニメ映画として企画制作が決まった後で “3DCG使っちゃいません?” ってなノリで無理に挿し込んでしまった感じがする。。。

2作品を観て思ったのは完成した映像のクオリティー。フレームレートも含めて絵としての完成度で天地の差がある。

TRONでは完成した3DCGをグラフィックアートとしてしっかりと絵作りし完成させているのに対して、ゴルゴ13劇場版は “コンテのオーダー通り今の環境で3DCGで作るとこんな感じになる” が吟味されずにそのまま一気に制作された感じがする。しかも動きの滑らかさや緩急にも格段の差があり、動く絵としてもTRONに分がある。また、実写と3DCGのTRON、アニメと3DCGのゴルゴ13劇場版の違いはあるが、絵作りとしてのマッチングに関してもゴルゴ13劇場版は詰めの甘さが露呈していると感じる。ゴルゴ13劇場版では通常のセル画アニメに、ただ線画処理もない3DCG(当時はトゥーンシェーダ等の線画処理は未開発テクノロージー)が挿し込まれたものなのに対し、TRONでは世界観の切り分け(現実世界とゲーム内の世界)としての意味もあるが、実写の人物&セットをCG風に加工処理するという当時としては画期的な発想でCGと馴染ませている。

予算や期間の問題もあるだろうけど、端的にいって一つの作品としてアウトプットされた時に”どうなの?”といった考えがゴルゴ13劇場版には無く、TRONにはあったものと考える。

映画作品として3DCGが必要だった作品TRONと、客寄せパンダとして当時先進的であった3DCGを “どこよりも日本内で先んじて導入したかった” 作品ゴルゴ13劇場版の違い、かな、、、まぁ世界規模の展開を考えたものとも思えないし。